2009年11月17日火曜日

標準模型(1)


 通勤電車の中で本を読むことは楽しいことであるが、今迄、「物理学」に関する本については、何冊かの本を除けば、途中で興味をなくしてしまうことが多々あった。それは、記載されている内容が徐々に尻窄みになってしまうものが大半であったからである。

 しかし、今読んでいる本は、違っている。その本は、《「標準模型」の宇宙 現代物理の金字塔を楽しむ》ブルース・シューム・著(森弘之・訳) 日経BP社2009/09/14 (原題 "Deep Down Things - The Breathtaking Beauty of Particle Physics", Bruce Schumm, Johns Hopkins University Press, November 2004)というもの。

 この本は、自然界の三つの基本的な力(電磁気力、弱い核力、強い核力)の働きかたを解き明かす、「ゲージ理論」に基づく素粒子の「標準模型」(Standard Model)に関する「入門書」である。
 「ゲージ理論」は、抽象的な対称性の議論から現実の相互作用のありかたを導き出す理論であり、自然界の基本的な力が対称性に従うものであり、方程式の持つ対称性が単純で美しいものであるという可能性を追求することによって、相互作用を表す項を導き出す。そして、素粒子の世界の対称性を数学的に表すのに使われるのが「リー群」という数学である。

 この本では、波動方程式、波動関数、等に関して、一般向けの量子力学に関する本では、記載されていない「ゲージ理論」、「リー群」との関連性について、物理的イメージが容易に理解できるように、平易な表現で記載されている。そして、U(1)、SU(2)、SU(3)等の概念を、複雑な数式を用いずに、平易な数学的イメージにより容易に理解することができるように工夫されている。

 「標準模型」は、「素粒子物理学」の世界を理解するために20世紀後半に多くの理論物理学者によって構築された理論である。 「ゲージ理論」、「リー代数」、「リー群」と「標準模型」との関係に興味がある人には、特にお勧めの本である。

 素粒子物理学の理論、特に、2008年にノーベル物理学賞を受賞した「小林・益川理論」の基礎をなしている「標準模型」に関して興味がある人にもお勧めしたい。

 本書は、量子力学のような基本的な「物理的概念」の知識があれば、その内容をより理解することができるが、高校程度の物理全般の知識があれば、多少の物理の基本書を参考することによって理解することができると思われる。

 以下にBruce Schumm教授のHPより抜粋したものであるが、同教授の実績を紹介する。Schumm教授は、理論物理学者ではなく、実験物理学者であることに特に注目したい。
Bruce SchummProfessor of Physics at University of California at Santa Cruz
(B.A.; Haverford College, 1981, Ph.D.; University of Chicago, 1988)

Finally, I have written and published a relatively accessible presentation of the Standard Model of Particle Physics, entitled "Deep Down Things - the Breathtaking Beauty of Particle Physics" (Johns Hopkins University Press, November 2004). In this book, I tried to present physicist's current thinking about the forces of nature without requiring a formal scientific background of the reader. The Universe is a wonderfully subtle yet fascinatingly structured place, and I hope the readers of Deep Down Things come away with a deeper appreciation of its miraculous beauty, as well as some of the conondrums that its deeper study present.

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