2009年6月11日木曜日

長寿禅寺(長寿寺)

 ちょうど通りを歩いているときに、拝観することができないと思っていた「長寿寺」が一般に開放されている「特別拝観」の期間中であることを知り、急遽、予定を変更して入山させて頂くことにした。

 宝亀山「長寿禅寺」は、関東管領であった「足利基氏」により、父改築「足利尊氏」の菩提を弔う為にその邸跡に延文3年(1358年)に建長寺派寺院として創建された。なお、「足利基氏」(幼名「亀若丸」)は、「足利尊氏」の第四子である。

 一般公開された「長寿寺」は、「本堂」や「書院」、等、主だった建物が改築されていて、私は、大いに気に入った。日本の御寺は、歴史を重んじるばかりに、なかなか「本堂」、等を改築したりすることができないのだが、この御寺はちがっていた。

 「本堂」に祀られている御本尊の「釈迦如来像」も新しい像のようだが、凛としていて素晴らしい創りである。

 特筆すべきは、やはり「書院」及び「小方丈」に上がって眺める「御庭」であろう。鎌倉の御寺では、「書院」から「御庭」をゆっくりと眺めることは、なかなか体験できないので、本当に素晴らしいことである。

 昨日、鎌倉の「大仏茶廊」の御庭で観た「つつじ」と同じ種類のものが綺麗に咲いていて、しばし佇んで眺めている。どうやら、この「つつじ」が大好きになってしまったようだ。

 「御庭」を眺めていると、直ぐ近くの県道を通る車の騒音を忘れ、ゆったりとした時の流れの中で、「仏」(自然)との「対話」が行なわれているような心境になる。それは、ちょうど「京都」や「奈良」の御寺で御庭を拝見しているときの雰囲気に似ている。

 また「書院」や「小方丈」の建物は、厳選された木材、等を使用して一部が改築されたものなので、新旧の和合がうまく調和していて、御寺が開山された当時の雰囲気を十分に味わうことができる。

 今日は、「書院」で「原山五葉個展」が開かれていて、いろいろな作品を見ることができた。彼女の書の作品は、なかなか素敵だ。その中でも気に入ったものとしては「西行法師」の和歌を記したものや、源氏物語の「桐壺」の絵、等である。御寺の中でこのような個展が開かれるのは、心が和み、なかなか感じがよいものである。

 御朱印を戴き、御住職の奥様と暫く話をした後、「本堂」を出て、拝観順路に従って「観音堂」へ向かう。

 「観音堂」は、もと奈良県の古刹忍辱山「園成寺」に在った「多宝塔」を改造移築したもので、その中には、「桐の一本彫」で造られた凛とした「聖観世音菩薩像」が祀られている。なかなか素晴らしい「聖観世音菩薩像」である。
 
奈良県の古刹忍辱山「園成寺」は、帰国後に「奈良」を旅したときに訪れた御寺の一つで、当時はまだ庭園が復元中で、重要文化財であった運慶の作であると伝えられていた「大日如来像」(現・国宝)を本堂の中で間近に観ることができたのが大変印象に残っている。これも何かの御縁であろうか。また、「聖観世音菩薩像」の背後の絵は、「迦陵頻伽(がりょうびんが)」の鳥が描かれている。

 「観音堂」裏の「やぐら」には、「足利尊氏」のお墓がある。御参りする。

その後、拝観順路に従って進むと「竹林」の木立の中に、「シャガ(著莪・射干)」(学名:Iris japonica・別名:コチョウカ(胡蝶花))の綺麗に花がたくさん咲いていて、自然と微笑んでしまった。春の訪れを感じるひと時である。

そして、程なく、先程の「庭園」及びその「裏庭」を眺めることができる。これは、最も素晴らしい景観だ。「書院」及び「小方丈」を含めたその眺めは、いつまで観ていても飽きることがない。

 「長寿寺」は、「北鎌倉」でも私のお気に入りの御寺:「円覚寺」、「東慶寺」、「明月院」の仲間の一つになってしまった。いろいろな季節を通して、度々訪れたいと思う。

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