2009年6月11日木曜日

東慶寺 早春の思い出


心よりやがてこころに伝ふれば
さく花となり鳴く鳥となる
      釈 宗演

 どいう訳か門前を通るといつも惹きつけられて自然と入山してしまう御寺の一つに「北鎌倉」の「東慶寺」がある。しかし、今日は、初めから訪れる予定だった。先月に続いての参拝である。

 今日の目的は、先に「東慶寺」のHPで調べておいた「仏像特別展」(3月7日(土)~5月10日(日)まで開催)を「東慶寺・松ヶ岡宝蔵」で見ることである。実は、前回訪れた際に、茶室で別の客が「《観音像》を見たいのだが、どこで見ることができるのか」と係りの人に尋ねていたところ、「予約をしないと見られないかもしれません」と言われていたことが気になり帰宅して調べたところ、その《観音像》とは、《水月観音菩薩半跏像》のことだということが判った。そのうち、「東慶寺」のHPで3月7日(土)から「仏像特別展」が開催されることを知り、「仏像特別展」で《水月観音菩薩半跏像》を拝観できるようなので、今日の参拝を計画したのである。

 展示会場である「松ヶ岡宝蔵」は、9時半に開場なので、ちょっと間があり、少し境内を散策することにした。

 御寺の奥にある開祖「覚山尼」(北条時宗の正室 父:安達義景、母:北条政子の弟・時房の娘)の墓所、後醍醐天皇の皇女「用堂尼」(5世)の墓所、豊臣秀頼の娘「天秀尼」(20世)の墓所、等に御参りするが、9時少し過ぎの早朝は、まだ観光客がいないので、静寂な境内をゆっくりと散策することができた。

 境内には、「みつまた」の黄色と赤の二種類の綺麗な花が咲いている。「松ヶ岡宝蔵」の入口近くには、綺麗な水仙が咲いていた。

 「松ヶ岡宝蔵」に入館する。入館料を払い、御朱印の記帳を依頼して入る。まだ誰も入館していないので、私一人が独占して仏像、等をゆっくりと拝観することができる。

 まず、入ってすぐのところに「木造 聖観音菩薩立像」祀られている。

 もと鎌倉尼五山の筆頭「太平(尼)寺」の本尊である。その凛とした御姿は、なかなか魅力的で、尼寺の御本尊らしく柔和な尊貌をされておられる。ゆっくりと参拝させて戴いた。

 展示場となっている二階に上がると、一目でそれと判る魅惑的な観音像「水月観音菩薩半跏像」が展示されていた。通常は、「水月堂」に祀られていて、拝観には電話かハガキでの予約が必要(特別拝観料300円)であるが、今回は、「松ヶ岡宝蔵」で拝観することができた。

 白衣をまとい岩座の上にゆるやかに、やや斜めに腰をかけ、水に映る月を眺めるので、水月観音と呼ばれる。右足を半跏にし、左足を垂下し右手に未敷の蓮華を持つ。衣文の複雑なひだの表現もたくみで、衣につつまれた膝の丸みの刻出も自然で、我々の苦悩のすべてを包み込んでくださるような柔和で慈悲深い尊貌をされておられる。

 鎌倉で美男の代表は「長谷の大佛様」、美女の代表は小さいけれど「松ヶ岡東慶寺の水月観音様」と言われているようである。

 小粒ながらなかなか魅力的な半跏像である。ケースの中に保護されているので、かえって安心して近づいて御顔や御姿をよく観察することができる。久し振りに魅せられた仏像だ。

 次に、「阿弥陀如来立像」がある。この「阿弥陀如来立像」は、両蓮華座に両足で立つ尼僧好みの弥陀の尊像であり、豊臣秀頼の娘「天秀尼」(20世)の念持仏であったが、堀主水の元・妻であった「寿林尼」に「天秀尼」が与えたものである。

 更に、「地蔵菩薩像」もなかなか印象的である。今迄、地蔵尊には魅力を感じたことはないが、ここの地蔵尊はちょっと赴きが異なり、しばし佇んで眺めてしまった。

 それ以外にも、興味を覚えた仏像が何体かあった。

 特に魅力を感じたのは、高村光雲・作の「聖観世音菩薩立像」である。

 また、「蒔絵」が施され数々の物品や、「釈宗演」に関する資料、等、小規模ながら、「東慶寺」の貴重な寺宝が展示されており、時間を忘れてしまう程であった。

 「松ヶ岡宝蔵」での拝観を終えて山門を出るときに、山門の左手前の「彼岸桜」が綺麗な花を咲かせており、いよいよ春の訪れを告げていた。

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