鎌倉市佐助にある《鎌倉大谷記念美術館》(住所:神奈川県鎌倉市佐助、館長:大谷正子)を訪れた。
ここは、「ホテルニューオータニ」の前会長、そして「ニューオータニ美術館」の前館長であった「大谷米一」氏の元鎌倉別邸を改装した美術館である。
大きな美術館以外のところで、絵画、彫刻、ガラス工芸品、等の美術品を間近に鑑賞するのは、実に久し振りである。
《鎌倉大谷記念美術館》の門を入り、緩やかに左にカーブする上り坂を歩いて行くとやがて美術館の入口に到着する。
アーチ形の入口の階段を上ると正面に加藤唐九郎の陶板の大作「白雲青松」(白い上の部分が雲、下の青緑部分が松)が飾られている。玄関のドアを開けて館内に入る。雰囲気的には個人の洋風邸宅に御邪魔するような感覚である。
邸内の入ると直ぐ左手に受付がある。大変に知的で品格がある女性が受付をされていた。入館料を払うと、「靴をお脱ぎにならず、そのままでお上がり下さい」と言われたので、靴を履いたまま邸内に入る。
玄関は、一階から二階まで吹き抜けになっていて、大変に明るい感じがした。入って直ぐのところに、「ピエール・ボナール」による「公園の中の子供達」の大きな縦長の絵が飾られていた。また、吹き抜けのところの壁には色彩豊かな「ステンドグラス」の窓が造られている。
また入口からちょっと上がったところに、素敵な構成の「サンルーム」があり、広々とした窓からは、鎌倉の市街地を眺めることができる。
「サンルーム」には、アントワーヌ・ブールデルによるブロンズ像「暁の乙女」及び「ペネロペ」の2点の彫刻と、ローマ時代の彫刻の1点が展示されている。そして「サンルーム」の窓越しに眺める御庭もなかなか綺麗だ。「いい創りの御宅だなぁ」とつくづく思う。
《鎌倉大谷記念美術館》を訪れたときには、『花とエコール・ド・パリの美女達』—ローランサンを中心に—という特別展(2009年4月7日(火)から6月27日(土)まで)が開催されていて、「エコール・ド・パリの画家」の代表的な画家である「マリー・ローランサン」の作品を中心に、「キスリング」、「モジリアーニ」、「ドンゲン」の作品が展示されていた。
どれも素晴らしかったが、マリー・ローランサンの代表作「少女と小鳥」が大変に魅力的であった。
また、今回初公開されたローランサンによるルイス・キャロル著『不思議の国のアリス』の挿絵本(リトグラフ)も大変に可愛いらしいアリスが描かれたものだ。
独自の神秘的な雰囲気の中にも明るい色彩で可憐な春の花を描いたルドンの「花瓶の花」は、見れば見るほど魅了されてしまう絵である。一見、写実的な絵であるが、近づいて見ると、繊細なタッチで実によくそれぞれの花が描かれている。
ルドンの作品とは対象的に、その繊細な美しさの中にも油絵の力強さが溢れているキスリングの「花」は、ルドンの作品以上に私を魅了してしまった。なかなかこの絵から離れることができなかった程である。
そして更に、一度ぜひ観てみたいと思っていたのレオナール・フジタ(Leonard FOUJITA(藤田嗣治))の作品の一つである「婦人像」が展示されていた。
工芸は、「ジャポニスムの先導者」と言われ、アール・ヌーヴォーの中心的役割を果たした「エミール・ガレ」の作品で、涼やかな草花模様に流水を配した「エナメルガラス花器」と「プラム文様花器」が展示されている。どちらもなかなか素敵なガラスの工芸作品である。
7月に展示品が模様替えされたときにまた訪れてみようと思う。鎌倉散策での楽しい立ち寄り場所の一つになった。
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