平成21年11月14日(土)
東京文化会館で開催された《「乞巧奠~七夕の宴~」~京都・冷泉家の雅~》を観てきた。
午後15時の開演前には、会場が既に満席に近い状態であった。
舞台上には、「二星(たなはた)」と「乞巧奠(きっこうでん)」の二つの祭りのための「祭壇」が既に飾られている。「祭壇」には、二つの星のための琴や琵琶(びわ)が並び、「瓜・茄子・桃・梨・空の杯・大角豆・蘭花豆・蒸しアワビ・鯛」がそれぞれの皿に盛られ、いずれも二組そろえられて並べられている(それぞれが、牽牛(彦星)と織女(織姫)への供え物)。五色の布や糸、花瓶には、秋の七草が活けられている。水を張った角盥(つのだらい)は、星を映して眺めるためのもので、「梶」(かじ)の葉が浮かべられている。
開演に先立ち、冷泉貴実子さんが、「乞巧奠」とは旧暦7月7日に同家の庭で行われ、「蹴鞠」、「雅楽」、「和歌」などの技芸を手向け、技が巧みになるよう祈る「歌会の儀式」である旨を話された。その後、各部の開始前に冷泉貴実子さんが、登場されて、各部の演目がどのような内容の行事であるのかを容易に理解することができた。
演目:
一部:蹴鞠(蹴鞠保存会)
二部:雅楽演奏(絲竹会)
三部:和歌披講(冷泉家門人)
四部:流れの座(和歌当座式)(冷泉家門人)
全ての部において、演じる人々が絵巻物から抜け出てきたような装束を身に纏い、その時間と空間を超越した優雅な立ち振る舞いと所作に、「平安時代」に遡ったような気持ちになった。
第一部の「蹴鞠」は、平安時代の貴族の装束を身に纏い、蹴鞠を行うものである。それぞれの人の所作や立ち振る舞いが印象的であった。
第二部の「雅楽演奏」は、初めてライブで聴く雅楽の大演奏で、西洋の楽器による演奏とは異なり、雅楽の楽器は、自然に調和している音を醸し出す東洋独特のものに思える。
第三部の「和歌披講」は、(冷泉家門人)により和歌を朗詠することである。あらかじめ出題された兼題について、詠まれた歌を披講するもの。読師と講師とから構成されていて、合唱が響き渡り、「和歌」の世界へ心が入っていく。
第四部の「流れの座」は、殊に素晴らしいものであった。歌の題は、組題(くみだい)で、「七夕(しっせき)」が頭につく、各人別々の題を、その場で各々が取りに行く。所役は、一人一人に重硯を配り、紙を用意して準備を整える。やがて男女のペア5組の間に「天の川」に見立てた白い布が敷かれ、彦星と織姫に擬された男女は、扇にのせた詠草を贈答して、翌朝鶏の声を聞くまで歌会を楽しむというもの。絵巻物から抜け出てきたような平安時代の貴族さながらの装束を身に纏い、歌会の「優雅な時の流れ」を感じさせてくれる。二組の男女が作られた歌を冷泉貴実子さんが披露して下さったが、大変にすばらしいもので、つい感激してしまった。御観覧の「天皇・皇后両陛下」も「流れの座」に御参加されたかったに違いないと思う。
「星あひのゆふべすずしきあまの河もみぢの橋をわたる秋風」
ますます「和歌」に興味を覚えた一日であった。
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