平成24年6月17日(日)にiPSの研究で世界的に有名な京都大学の山中伸弥教授と世界で最初にクローンの羊を誕生させた英国エジンバラ大学のイアン・ウィルマット教授の講演会があり、日本科学未来館に聴きに行ってきた。
ISSCR2012パブリックシンポジウム iPS 細胞と私たちの未来
日時: 2012年6月17日(日) 16:00~18:00
場所:日本科学未来館1階 シンボルゾーン
山中伸弥教授 京都大学 iPS細胞研究所
(2012年ノーベル生理・医学賞授賞)
後日(10月8日(月))に「ノーベル生理・医学賞」が発表され、山中教授が授賞された。この講演は、私がこれまで聴いたノーベル賞授賞者の講演の中で、ノーベル賞授賞が発表される前に(即ち、それに先駆けて)聴いた、初めての講演となった。
本イベントでは、iPS細胞を道具として手に入れた私たちの可能性がどこまで広がるかをテーマに、SF作品で描かれた様々な生命のあり方を紹介しながらともに考えます。
国際幹細胞学会との協力の元開催される当イベントでは、第一線で世界的に活躍しているゲストをお招きします。クローン羊「ドリー(Dolly)」の生みの親、イアン・ウィルマット氏と、iPS細胞を開発した山中伸弥氏です。
壇上に立った山中教授が話し出したことは、クローン羊「ドリー」の名前の由来について、である。「ドリー」という名前は、乳腺細胞由来にちなんで、飼育係が「巨乳」の持ち主として知られている歌手で女優の「ドリー・パートン(Dolly
Parton)」の「巨乳」を称えて提案したものである」という。これまでに、いろいろな科学者の講演を聴いたが、「山中教授は、ちょっと異質な人だなぁ」、と直感した。その後、TVや新聞等の報道を通じて、山中教授は、ユーモアのある人であることが分った。
講演内容の概略は、以下のような内容であった:
(1) ミシンの部品を作る小さな町工場を経営していた父を尊敬していた。58歳の若さで亡くなったが、「経営者でもあったが、最後まで技術者だった。それを見て育ったので研究者より技術者というマインドの方が強い」
(2)神戸大医学部を卒業後、整形外科医を志したが、医者としては、あまり適していないことが分り、基礎医学の研究に転身。
(3)1993年、米国に渡り、本格的な研究者人生をスタート。一生肝に銘ずる言葉と出会う。「Vision(ビジョン)& Hard Work(ハードワーク)」(advised from Gladstone Institute’s
President, Dr. Robert Mahley)。
(4)1999年に奈良先端科学技術大学院大に助教授として採用され、初めて研究室を率いた。そのときに、「学生が来てくれないと大変なので、これはもう、だますしかないなと。夢のあるテーマをあげたらだまされて来るんじゃないか」ということで、「iPS細胞」を研究テーマにした。
(5) ES細胞で特異的に発現し、分化万能性の維持に重要と考えられる因子を中心に、24個の候補遺伝子を選んで実験を行ったが、どの遺伝子も単独ではG418耐性を誘導できなかったので、24個すべての遺伝子を導入したところ、G418耐性の細胞からなる「コロニー」を複数形成することに成功した。この細胞を分離培養するとES細胞に酷似した形態を示し、長期に継代可能であった。このES様細胞株を「iPS細胞」と命名し、24遺伝子の絞り込みを行い、最終的に4遺伝子(Oct3/4,
Sox2, Klf4, c-Myc:≪山中因子
(Yamanaka factors)≫)でiPS細胞を作ることができるということを発見した。
(6) 「この技術を待っている患者さんと我々では1日の持つ意味が違うということを毎日私自身にも、研究員にも言い聞かせている」。
山中教授に関する参考文献:
山中伸弥・益川敏英・『「大発見」の思考法―iPS細胞vs.素粒子』(文春新書)
iPS細胞に関する参考文献:
『iPS細胞がわかる本』 [単行本(ソフトカバー)]
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